2017年日本GP観戦記


↑今回もだいぶ写真を撮りましたがご覧のようにすべて金網越しです。

10月8日(日)
 朝4時半。当然まだ暗い。昨日の酒が完全に抜けておらず少々頭が痛いがあとは快調。いつもの半分しか寝ていないとは思えない。眠気より興奮の方が優っているらしい。すでに準備してある荷物を持って5時に家を出る。行きの新幹線は6時6分発の切符を買っておいてある。東京駅までは普段は何も考えずにタクシーで行くのだが、さすがにこの時間ではそんなに走っておらず、仮に見つけても回送が多い時間帯なので地下鉄で向かう。しかも、始発。
 5時半には東京駅に到着。すでにF1モードの人がチラホラいる。6時6分発ののぞみでまず向かうは名古屋。約1時間半の行程はほとんど眠って過ごし7時半過ぎには名古屋に到着した。ここで近鉄で志摩に向かうカミさんと別れて在来線乗り場へ。行きは8時5分の特急南紀で鈴鹿サーキット稲生駅からサーキット入りすることにした。特急券は割とギリギリでも手に入りゆったり座って行ける。

↑名古屋駅のホームで動揺しつつ電車を待つ。やっぱりチームシャツ着て来ればよかった。

 ホームを見渡すとF1のチームシャツを来た人がたくさん。外国からの人も多い。そういうことならそろそろ持って来たフェラーリのシャツでも着ようかな、と思ったところで異変に気付いた。無い。着替えを入れたカバンが。ものの見事に新幹線に忘れて来てしまった。普段持ち慣れない荷物を普段使うことのない網棚に載せたのがいけなかった。
 しかし、ここで慌ててはいけない。というよりももう電車の出発時刻が近く、今から問い合わせをする時間はない。乗っていた新幹線と車両、座席番号は控えていたので(1番E席で「一番いい席」だと写真に撮っておいたのが幸いだった)帰りに問い合わせればいいということにする荷物が減って良いやぐらいの気持ちでいたが、もう一つ忘れ物。やはり事前にとっておいたレース後に白子駅から志摩に向かう特急券もカミさんからもらい忘れてしまった。こちらは痛い。今回この連休のために用意した近鉄の周遊切符「まわりゃんせ」に含まれている分だったが無駄にする羽目になってしまった。いきなりアクシデント続きだったがこれから楽しいことが待っているのだ。くよくよしてはいけない。
 電車に乗り込みいざ鈴鹿へ。幸い近鉄はネットで特急券がしかもチケットレスで買えるので移動中に改めて購入。まだまだ席は空いていたので良かった。チケット購入と忘れ物の問い合わせ方法を調べていたらあっという間に鈴鹿サーキット稲生駅に到着。

↑鈴鹿サーキット稲生駅。ここほど普段と繁忙期の差が著しい駅もないでしょう。

 この電車普段は通過して行くらしいが、さすがはF1、臨時で停まってくれる。ホームに人が溢れるほどではないが結構な人の波である。普段は無人駅のこの駅もこの一大イベントのために臨時の改札口に帰りの切符売り場と駅員が大増員。ぞろぞろと進む行列について歩いて行く。サーキットまで一歩一歩足を進めると一気に気分が上がってくる。沿道もフードトラックに駐車場とイベント感をさらに上げてくれる。しかもみなさん「おはようございます」、「楽しんで行ってください」と優しい声かけをしてくれる。こういうのがジャパニーズ「おもてなし」の真骨頂だ。
 20分ほどで1コーナーゲートにたどり着いた。入ってすぐ遠くにサーキットが見える。ついに鈴鹿サーキットに到着した。ここからホームストレート方面に行くとグッズショップや企業ブースのあるGPスクエアに出た。まだ朝早いから人もそれほど多くない。どこから始めようかと考えた結果腹も減ったので軽く腹ごしらえから。まだまだ本調子でないから胃に優しいものを、と見て回った結果、さすがはご当地、伊勢うどんを発見して食べる。胃を落ち着かせるのに最適のチョイスだった。

↑下の道路に向かって手を振る人たち。どうやらドライバーの「入り待ち」のようで。さすが皆さんよくご存じで。

 改めてGPスクエアを見渡す。人が集まっているのはウイリアムズ40周年記念展示ブース。ブレイク前のFW04、ケケ・ロズベルグのチャンピオンマシンFW08、ホンダエンジン搭載のFW09、そしてコンストラクターズチャンピオンにも輝いたFW11の4車種がディスプレイされていて時間によってカウルが外されたり、エンジンをかけてみたりと目が離せない。しかもお昼にはこれらのマシンのデモランもあるというのでこれは楽しみだ。とりあえずカメラとスマホでバンバン撮っていく。


↑歴代のウイリアムズF1たち。スポーツカーノーズのマシンを作っていたなんて、現存するF1チームでもここだけでしょう。

 徐々に人が多くなって来たのでそろそろグッズを物色する。一番のお目当てはやっぱりチームシャツ。特に欲しいのは伝統のマルティニストライプがかっこいいウイリアムズ、あとネタにもなるからフォースインディアも欲しかったが、GPスクエアのグッズショップはフェラーリとレッドブルとマクラーレンホンダでほぼ占められている。あとはチャンピオンチームであるメルセデスが申し訳程度の広さであるのみ。他のチームは売れないということか。7年前にスペインとモナコに行った時はロータス、ヴァージン、HRTはさすがになかったけど、ルノーもフォースインディアもザウバーもちゃんと売られていたというのに。特にマクラーレンホンダのブースが一番広かったが、マクラーレンがホンダを見限った今となってはどうしても在庫処分にしか見えない。あーあ買うものないか…と途方に暮れていたが、1コーナーゲートからGPスクエアに向かう間にグッズショップがあったのを思い出しそちらに移動。年式落ちだがここでウイリアムズのチームシャツを発見。ここ数年大きなスポンサーの入れ替わりがないのでこれを買うことに。早速袖を通してF1モードに早替わり。他も見て回ると往年のF1チームをモチーフにしたレトログッズも見つけてここで明日着るTシャツを探す。ブラバム、リジェ、レイトンハウス、ヘスケスなどを退け選んだのはシャドウとマトラスポール。我ながらニッチなセレクトだと思う。よほどコアなファンじゃないとこれがF1チームだとはわかるまい。

(左)やたらと広いマクラーレンホンダのグッズショップ。もしかしたら今後プレミアがつくかも。
(右)企業ブースで一番大きかったのはiQOS。こういうところでフィリップモリスは暗躍しております。


↑こんなとこまで伊勢名物が!!

 午前11時。伊勢うどんはあっという間に消化されたし胃が活発になってきたのでまたしても腹が減って来た。 少々早いが昼飯にする。定番の屋台飯に炭水化物、肉、ご当地フードとちょいとしたフェス状態だ。このフードブースの充実ぶりには大変驚かされる。スタンドのすぐ後ろがカフェなんてこともあるモナコは別としてもスペインなんて基本飯はボカディーリョだけだったからなぁ。迷う嬉しさをかみしめつつまずは元気をつけるために肉ということでシンプルにシュハスコを一気呵成に食べる。さらにグランドスタンド下で坦々麺も。汁なしを頼んだのだが、品物を受け取った後で買ったばかりの白いシャツを着ていることを思い出す。腰にぶら下げているタオルを首にかけて可能な限り顔をよせて麺をすする。なんとか油はねは回避できた。腹がだいぶ落ち着いたのでそろそろいいだろうと飲むパンことビールにも手を出す。今や大スポンサーとなったからサーキット中で売られているのは全てハイネケンだ。青空の下で飲むビールはやっぱり格別。

↑ハイネケンの生ビールスタンド。いい天気だからビールがうまい。

 12時が近づいてきたのでそろそろ席に向かうことにする。今回日曜日しか行けないので席に関してはだいぶ悩んだが、思い切ってグランドスタンドV2席を手に入れた。GPスクエアからは目と鼻の先。しかもカメラを構えやすいように最前列だ。屋根はあるが、太陽は真正面にあり日陰は全くない。早速行われているポルシェカップの車両で写真を撮る練習。どうしても金網越しになってしまうがまあまあそれなりの大きさで撮れる。ただし、今愛用のデジカメにはファインダーがなく、ディスプレイでの流し撮りが難しい。
 12時になるとヒストリックF1のデモラン。まずコースに出てきたのはホンダRA300。50年前のマシンとは思えないくらい生き生きとしたV12エンジンの咆哮がサーキットにこだまする。ドライブするのは佐藤琢磨選手。F1の前にインディ500ウイナーの走りを見られるとはなんて贅沢だ。走行を終えると座っているところの少し斜め前に車を止めてその場でインタビュー。ちょいとズームをきかせれば表情までわかる近さ。

↑デモランだったけどインディ500ウイナーの走りが見られました。佐藤琢磨選手は日本の誇りです。

その後はドライバーパレード。個人所有のクラシックカーに乗って一人ずつサーキットを回っていく。待機している間にもインタビューがあって、質問に対して「ハイ、ハイ」と返事すリカルド。いつも通り仏頂面のライコネン。顔見世目的なものなのに日差しを避けようと傘に隠れるハミルトンなどそれぞれ性格が良く出ている。ボッタスはインタビュアーも同乗して周回。「赤いシャツの人が多いですね」と無駄にアウェイ感を出されていた。このレースを最後にルノーに移籍するサインツにはやっぱり移籍に関する質問がぶつけられるがそのすぐ後ろにいるのはパーマー。なんと間が悪い。

↑メキシコ地震チャリティーのためドライバー全員で記念撮影。よく見ると19人しかいません。誰がいないんでしょうかねぇ。



↑ロズベルグ、アロンソ、ライコネン、ベッテル、バトンとチャンピオンがそろい踏み・・・って、こちらも一人足りなくない?

  ドライバーパレードの後は再びデモラン。今度はGPスクエアで展示されていたウイリアムズのマシンが走行。FW04とFW08は所有しているオーナーが走らせる。どちらもヒストリックカーレースで現役で走っているということで動きも軽快だ。少し遅れてFW11も登場。紺地に8本オールのヘルメット、1996年のチャンピオン、デイモン・ヒルのドライブだ。1994年の雨の中での勝利に1996年のタイトルを決めた勝利とヒルも鈴鹿の歴史を飾る名ドライバー。先ほどのRA300の横にマシンを止めて佐藤琢磨選手と小林可夢偉選手も交えてのトークショー。57際のヒルは髪も髭も真っ白。いい歳のとり方をしてるなぁ。

↑デイモン・ヒルによるFW11のデモ走行。やっぱりレーシングカーは走ってなんぼです。動態保存をしているホンダには頭が下がります。

  トークショーが終わると1時過ぎ。そろそろF1マシンが動き始める頃。向かいのピットではマシンが出てきてエンジンが回り始める。インスタレーションラップを行い、ホームストレートまで帰ってくるとちょうど目の前で停止してそこからメカニックの手によってグリッドに運ばれていく。ちょうどいいシャッターチャンスだが、スピードが無い分金網がぶれずに写り込んでしまいちょっとイマイチ。それでも2017年の新世代F1をじっくり見られるまたと無いチャンスだ。

↑ハイノーズのF1カーは今にも飛び立ちそうな感じでしたが、現行マシンは逆に地面に吸い付いて滑っていく感じに見えます。
 大きなカーナンバーと3文字イニシャルの視認性は抜群です。


 幅が広くなり、リアウイングが低くなったことで非常にどっしりとした印象を受ける。ターボエンジンの音はというと低く野太い音で耳栓がいらない。自然吸気エンジンの時は一台通るだけで耳栓なしではいられなかったが、何台いても鼓膜が破られるような感じは全く無い。 エンジン音の改善が騒がれているのも納得。

↑メルセデスコンビが作戦会議中。もしくは「名古屋の『マウンテン』っていう店行きたいんだけど知ってる?」(ルイス)「俺イチゴパスタ食いたい」(バルテリ)

 徐々にホームストレートにマシンが戻ってきてグリッドに並んで行く。座っているところは最後尾付近。今回はグリッドペナルティがたくさんあって、最後尾はサインツとアロンソのスペイン人コンビ。ちょうど後方の席にスペインからの応援団なのか必死にアロンソコールを送っている。ちなみに客の入りは8割ほど。自分の周りはほかに客がおらず気兼ねがなくていいや。

↑フォーメーションラップへと向かう20台のマシン。53周のレースが今幕を開ける。


 国歌斉唱も終わりフォーメーションラップへ。緊張感が一気に高まり、スタート。ハミルトンが飛び出し逃げを打つ。ベッテルも食らいつくが、すぐにフェルスタッペンに抜かれ後退。それどころか後続のオコン、リカルドにも抜かれどんどんポジションを落としていき結局10周持たずにリタイア。チャンピオン争いがますますハミルトン有利に。

↑オコンとリカルドに追い回されるベッテル。サーキット中のフェラーリファンのため息が聞こえてくるよう。

 ライコネンが何度かホームストレートでオーバーテイクを仕掛け観客を沸かせたもののハミルトン独走は変わらず。後続も大きな順位変動はなくライコネン、リカルド、ボッタスの走りに注目が集まる。途中のピット作業もグランドスタンドから見られる楽しみのひとつだが、今回は1ストップ中心でで大きな順位変動もなし。唯一DRSが壊れて入ってきたヒュルケンベルグのマシンをメカニックが叩いて直すというなんとも原始的な対処が楽しかった。


↑座っている席から動かずズームを変えていろいろ撮ってみました。流し撮りがうまくいくと金網が少し気にならなくなるんですよね。

 セーフティカーもバーチャルセーフティカーも出たが、レースの大勢に関わることはなくハミルトンが勝利。2位にフェルスタッペン、3位リカルドという表彰台となった。チェッカーが振られたのは3時半前。想定内のレース時間だった。

↑結局今回も"The Lewis Hamilton Show"でした。でもライブで見るといつものショーも新鮮ですな。

 さあ、ここから始まるのが帰宅グランプリ。今日はこれから近鉄特急に乗ってかみさんが待つ宿のある賢島の2つ手前の鵜方駅まで行かなくてはならない。しかも宿の夕食のタイムリミットは7時。今日ネットで購入した特急の時間は16時51分。鵜方に着くのが18時17分。そこからタクシーと宿までの渡し船の時間を入れてもこれなら7時前には着く。流石に1時間半あれば大丈夫だと思いたいが、初の鈴鹿ではいったいどれくらい時間がかかるのかわからないのだ。鈴鹿サーキット稲生駅からは電車の本数も少なく、駅自体が混雑するというので帰りは白子駅を利用することにする。特急にもそのまま乗れるし、関西方面への分岐を過ぎれば混雑もないだろう。問題は白子駅まで行くシャトルバスの混雑具合。乗ってしまえば渋滞はないようだがどれだけ早く乗れるかにかかっている。

↑「また来年お会いしましょう。」次回は鈴鹿で30回目のグランプリです。行けるといいなぁ。

 今日はいつも通りのイギリス国歌からのドイツ国歌なので表彰式はパス。佐藤琢磨選手によるインタビューが見られないのが非常に残念だが、仕方がない。GPエントランスからメインゲートに向けて全力で歩く。こういう場では走ってはいけないので全速力で歩く。グランドスタンドはこういう時にもアクセスが良く選んで正解だった。約15分ほどで白子駅行きのシャトルバス乗り場に到着。行列はまだできておらず、そのままバスに乗ることができた。この時点で15時50分。これで一安心。カミさんにLINEでシャトルバスにもう乗れたと送ったらさすがに驚かれた。

(左)白子駅行シャトルバス乗り場についた時の状況はこんな感じ。これなら表彰式見ても大丈夫だったな。
(右)白子駅名古屋方面行のホームはこれくらいの混み具合を終始キープしていました。近所の高校生がやや迷惑そうな顔をしていました。


 4時過ぎには白子駅に到着。時間に余裕があるので少しブラブラとしたいところだが、これからもシャトルバスはどんどんくるだろうし、なんとなく進んでいかないといけなさそうな空気だったので早々に改札を通りホームへ。すでに特急券は買ってあるし、乗車券もICカードで通れるのですんなりホームに行けたが、特急券や乗車券を買う列は切符売り場から階段を通って駅舎の外まで伸びている。ホームで40分ほどボーッとしたり歩き回ったりして時間を潰す。反対側の名古屋方面のホームは徐々に人が増えて行くがちょうどタイミングよく電車が到着して大混雑という感じではない。
 こちらのホームにも乗るべき特急電車が到着した。意外にもホームで待っている人たちもそれほど乗り込まず比較的余裕のある車内だ。津と伊勢中川でだいぶ乗客が降りるとそこから乗客はまばら。時間通りに鵜方についた。
 宿へはタクシーで渡し舟に乗る港まで。タクシーに乗るや否や運転手さんから「F1ですか?」と言われる。なんでわかったんだ!?聞くとこの運転手さんも鈴鹿参戦経験のあるF1ファンだそうで話に花が咲く。類は友を呼ぶというのかモナコでもこんな偶然あったなぁ。あの時は飯屋で隣に座った人と意気投合したっけ。船着場についた頃には辺りは真っ暗。他にも数名の宿泊客が船を待っていた。程なくして渡し船が来て宿に到着。ようやくカミさんと合流できた。
 ひと風呂浴びてお楽しみの夕食。伊勢海老にアワビに松坂牛と伊勢志摩のうまいもののオンパレード。長い距離を移動して好きなF1を生で見て最後にこの食事。こんなに幸せでいいのかしら。大変に中身の濃い充実した1日となった。食後にもう一度温泉を満喫し、布団の上に大の字になって志摩の夜はふけていった。

↑伊勢国は別名「御食つ国」。やっぱりここまで来たからにはうまいものは外せません。



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